BitSummitで生まれるチャンスを多くの出展者と共有するために

2017年5月11日

日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit」が5月20日(土)、21日(日)に京都・みやこめっせにて開催されます。国内外から多くの参加者・ゲーム関係者が集まるこのイベントの運営には、京都を拠点に活動するゲーム企業が多く関わっています。
BitSummitに関わる方々にスポットを当ててお話をうかがうシリーズ企画の第二弾となる今回は、株式会社Skeleton Crew Studioの村上雅彦氏にお話をうかがいます。村上氏は実行委員会メンバーでもあり、かつ出展者でもあります。運営側と出展側の両方に立つからこそ見えてくるBitSummitの魅力についてお話いただきました。

BitSummitで得た経験を他の出展者にも

(村上氏)
実行委員会には第3回の「BitSummit 2015」から参加していて、今年で3回目になります。実行委員会に参加する以前は、いち出展者として参加していました。実行委員会に参加するきっかけは、「BitSummit 2014」に出展した『MODERN ZOMBIE TAXI DRIVER』で大賞をいただいたことです。2014年の受賞後、作品を持って海外に売り込みに行ったら、「一緒に作品開発しませんか?」とお声かけいただき、お仕事をもらえたんですよ。ビジネスにつながった経験はとても貴重なもので、僕たちみたいな経験を他の出展者たちにも経験してほしい、運営側から出展者たちをサポートしたい、という気持ちがあって実行委員会に参加しました。もちろん、このイベントがあったおかげで仕事につながったという恩も実行委員会に参加した理由の一つですね。

僕たちの場合は自ら積極的に動いて作品を売り込んだのですが、BitSummitに出展して話題になったタイミングで売り込みに行くのってなかなか難しいと思うんです。なので、一度その経験を積んだ立場として、運営側からそのノウハウや製品化の道筋を見せてあげられたら嬉しいですね。BitSummitはインディーゲームを作るクリエイターたちを応援するためのイベントだから、もっと僕たちみたいなことを他の人たちにもやってほしいなという気持ちがあります。

インディーゲームというカルチャーでつながった世界中の人たちと出会う・仕事する、という体験をしてもらいたいし、作品を世に出すチャンスをイベントとしてサポートしていくことは、BitSummitとしての今後の課題でもあり大事な部分ではないかと感じています。

熱意と苦労の中からより良いものを生み出す ―運営の立場からみるBitSummit

出展者の大変さを分かりつつ運営する

実行委員会では、デザイン関係を中心に担当しています。イベントテーマやロゴの方向性の確認、Tシャツのデザイン連携などです。今年はフードブースやボランティアまわりのやりとりも担当していますね。そして、英語が話せることもあってIndie MEGABOOTHなどの海外とのやりとりも担当しています。

僕なりに意識している部分ですが、出展者という立場を忘れないように運営したいと思っています。BitSummitが出展者のためのイベントだから、というだけではなくて、出展者の方が困っていることや求めていることって出展してみないと分からないことも多いですよね。出展する大変さを分かりつつ運営するほうが僕の役割的にも必要かなと考えるからです。僕は出展者からいろいろな意見を直接いただきます。全部の声を反映することは難しいこともありますが、出展者にとっては僕のように気軽に声がかけられる存在が運営側にいると安心できるんだと思います。あとは、出展者の視点で意見を出せる存在も実行委員会に一人くらいは必要ですしね。

運営に携わるなかで見えてくる課題

BitSummitを作り上げるのってとても大変なんです。一番苦しむ部分は、お金と内容を並行して進めないといけない点になります。いつも、最初の段階では大きな構想を考えるんですけど、進むにつれてスポンサー収入に応じた企画や内容を取捨選択しつつ動いているのが現状です。イベントの質を落とさないために実行委員会メンバーの熱意や気持ちでやっている部分も多いです。より良いものを作りたいがために全体的にギリギリになってしまう部分が多く、毎回、出展者をはじめとして多くの皆さんの協力をいただきながらやっています。

そして、スポンサー集めも毎回苦労しますね。続けていくためにはお金が必要になるので、スポンサーの方々がいないとイベントは成り立たないですから。スポンサーへのメリットやビジネスの価値をより一層高めていくこともBitSummitの今後の課題に挙げられると思います。今回は日本の代表的なパブリッシャー企業さんがスポンサーとして集まっていただいています。面白いゲームや新しいクリエイターが生まれるインディーゲームのパワーがあれば将来的に自分たちの業界が盛り上がる、と感じていただいているのかもしれません。

実は、運営の仕事は本当に大変なことが多くて、運営に携わるのは今回で最後にしようと毎年思うんです(笑)でも、実際にイベントが始まって、出展者・参加者の嬉しそうな顔を見ると、やってよかった、手伝えてよかったと思います。

チャンスを生み出す場として ―出展者の立場からみるBitSummit

BitSummitの価値を意識して動く


BitSummitはインディーゲームに興味を持つ人が訪れます。それは自分の作品のファンを作るチャンスです。さらに、世界中のメディアも集まります。メディアにアピールすることは、自分の作品を上手く拡散させる絶好の機会になります。インディーゲームというゲーム業界の一つのジャンルに興味を持つ人々が集まる場はなかなかありません。BitSummit自体がチャンスを生む環境になっているんです。

今年も僕たちは出展者としてブースを構えます。最初にお話したように『MODERN ZOMBIE TAXI DRIVER』をきっかけにお仕事をいただいたこともあって、僕たちはBitSummitの価値を十分に分かっているので、このイベントを活用することをすごく意識します。ビジネスイベントではありませんが、来場者にアピールするために作品を完璧に仕上げようと準備を進めています。

BitSummitは、ようやく動き出した作品や可能性をある作品を初めて発表する出展者の方も多いので、もしかしたらイベントの価値を認識できていない方もいるかもしれません。でも、単なる記念出展的な感じだと非常にもったいないです。もし、この記事を出展する人・今後出展したい人が読んでくれているならば、BitSummitでは自分たちの作品を積極的にアピールするように、と伝えたいです。例えば、通訳ボランティアに協力してもらって海外の人と積極的にコミュニケーションをとる、などほんの少しの動きから始めればいいんです。つながりを作るという意識を持って臨むことで、ファンや仕事と出会えるチャンスが生まれると思います。

村上さんにとってのインディーゲームとは

粗削りな宝石の原石

分かりにくい部分や見た目が完璧ではない部分があっても、作り手の強い思いが伝わってくればそれはインディーゲームだと言えると思います。例えば、粗削りな宝石の原石って磨いていったらきれいになるはずですよね。光り輝く宝石までには至ってなくても、その可能性を秘めた強い輝きというか要素が入っていることがとても大切で。インディーゲームも同じですよ。完璧な作品ではなくても、作り手の伝えたいことや思いがしっかりこめられた作品が、人々の心を捉えるインディーゲームになるのだと感じています。

単純に作り手の思いや意志が見えるものって、見ていて気持ちがいいですよね。作り手の強い思いを作品にこめるという、ものづくりとしてのあるべき姿がインディーゲームにはあると感じています。だからこそ、BitSummitの出展者やものづくりの方々を僕は応援したいと思うんです。今後、インディーゲームを世間に向けて広く発信できる環境が整ってくることで、みなさんがゲーム制作に挑戦する機会が増えてくれればいいなと期待しています。

A 5th Of BitSummit開催概要

日  程
2017年5月20日(土)・21日(日)
時  間
10:00~17:00
会  場
京都市勧業館「みやこめっせ」 1階 第2展示場
主  催
BitSummit 実行委員会・一般社団法人日本インディペンデント・ゲーム協会(JIGA)
 ( Q-Games Ltd. / PYGMY STUDIO CO., LTD. / VITEI BACKROOM Inc. / O-TWO inc. / 17-Bit / Digital Development Management, Inc. / Indie MEGABOOTH )
・株式会社ワン・トゥー・テン・ホールディングス
・株式会社インピタス
・京都府
・京都コンピュータ学院
制  作
株式会社オリコム
WEB

http://bitsummit.org/2017/ja/

プロフィール

村上雅彦
一般社団法人日本インディペンデント・ゲーム協会理事/株式会社Skeleton Crew Studio代表取締役社長
日本のデザイン専門学校を卒業後、渡米。
サンフランシスコのAcademy of Art Universityでイラストレーションを学ぶ。卒業後、エンターテイメント業界でコンセプトアーティストとして働き始める。2009年に帰国、株式会社 VITEIに入社。『Steel Diver』など複数の任天堂タイトルにアーティストとして参加。2015年より、株式会社 VITEI BACKROOM 代表に就任しVRタイトルの開発に関わり始める。2017年、2月に自身の会社『株式会社Skeleton Crew Studio』を立ち上げる。現在、インディーゲーム、VR/AR、観光/文化、アート等の多方面で、新しい挑戦を展開中。
BitSummitへは第3回から開催メンバーとして関わり、2015年有志とともにJIGA(一般社団法人 日本インディペンデント・ゲーム協会)発足、理事に就任。