京まふ商品化インタビューファンに愛される商品を作る

2017年9月13日

今年9月16日(土)・17日(日)、京都国際マンガ・アニメフェア2017(京まふ)が開催されます。人気アニメ作品のブースや人気声優が登場するステージ、グッズ販売などが展開され、多くのアニメファンで賑わう人気イベントで、京都ならではの商品として伝統工芸などとのコラボ商品も販売されます。

今回は、今年の京まふにも新商品を発売する株式会社舞扇堂にお話をお伺いします。伝統工芸とキャラクターとのコラボ商品を担当されている鬼塚香奈子氏にキャラクターを使った商品化のきっかけや今回の京まふで販売する商品など幅広くお話いただきます。

仲間を巻き込んでの商品化

(鬼塚氏)

アニメの商品化に取り組むきっかけは京都で開催された「薄桜鬼」のスタンプラリーイベントに参加したところからです。今まで手がけた商品化は、ゲーム「薄桜鬼」が最初で「シドニアの騎士」、TVアニメ「文豪ストレイドッグス」、そしてTVアニメ「有頂天家族2」になります。

最初の「薄桜鬼」の商品化では御朱印帳を作りました。当初はブックカバーを作ろうかと社内で進んでいたのですが、「薄桜鬼」が新選組のお話で京都にはゆかりのお寺などがあるので、お寺めぐりをするファンがいるのでは、という考えから御朱印帳になりました。

実は、私自身アニメやマンガは好きですが、「薄桜鬼」は作品の概要くらいしか最初知らなかったですが、商品化にあたって社内の仲間に助けてもらって意見やアイディアをたくさんもらいました。アニメが好きな人って結構周りにいるもので、例えば隣の部署の方だったり、同僚の娘さんだったり、協力会社の方だったり。身近なところにファンがいることで試作や企画を見せてアドバイスをもらうことができました。もし自分自身が作品をあまり知らなくても周りにどんどん聞いてみることって大切だと思いますね。また、仲間を巻き込んで商品化することには良い点があって、商品化された時、みんな商品により親しみを持ってくれるんです。自分が意見を出した企画が商品化するって嬉しいじゃないですか。だから、愛する商品の製造に携われる、販売できる、そして手に取ったお客様にも喜んでもらえるアニメの商品化ってとてもハッピーなことだなって感じたんです。

ファンに刺さる商品作りのために

「京都の扇子屋」という武器を生かした商品企画

私たちの考え方としては、その商品が「京都の扇子屋の舞扇堂」だからできるものであるか、というところが商品化に踏み切るラインになります。

まず、扇子を作る中で得た自分たちの武器・強みってなんだろうと考えてみて、その武器に何をプラスアルファすればファンに刺さるものが生み出せるか、ということを考えます。私たちの本業は扇子屋で扇子の製造・販売がメインですが、普段お取引のある企業さんに協力していただくと扇子だけでなくいろんな商品を生み出すことも可能です。例えば、「シドニアの騎士」であれば舞扇堂でしかできないプレミアムな扇子を、「薄桜鬼」なら扇子の絵を描く扇面絵師の原画を使って御朱印帳を、「有頂天家族2」なら普段の扇子の房飾りなどでお世話になっているくみひも屋さんに協力してもらってブレスレットを作りました。扇子屋がブレスレット?と思う方もいるかもしれませんが、扇子で房飾りをつけることも多い私たちにとっては全く異分野ではなく、むしろ馴染み深い素材なんです。なので、それをうまくアレンジして商品化している、という具合です。このように滅茶苦茶な無理はしないけど少し工夫すれば作れるものを商品化の際には意識しています。

昨年の京まふで販売した「文豪ストレイドッグス」のブックカバーもそうです。私たちが商品化を考える時には「文豪ストレイドッグス」のブックカバーは商品として世の中にありました。基本的には既にある商品は企画を出しても許可が下りないことが多いと聞いていたので、私たちは「京都の扇子屋が作るブックカバー」ということでふすま紙と和柄のデザインを組み合わせた企画で勝負し、無事商品化することができました。ふすま紙自体は扇子作りでも使っている素材ですし、作品にマッチする和風のデザインも扇子製造で培ってきたものがあります。そして「京都の扇子屋」という付加価値も舞扇堂ならではの武器です。それらの武器が作品の雰囲気とうまく合わさって良い商品を生み出すことができました。

アニメ商品の市場を体感する

あと、商品企画の際にはアニメショップに行くことも重要だと考えています。アニメに限らず市場調査ってどんな事業でも必ずやる当たり前のことではあるのですが。アニメショップはコストをかけずにアニメ商品の市場を知ることができる絶好の場所なんです。陳列の様子からだけでも、現在人気のある作品・商品の傾向を知ることができます。そして、さらに商品を手に取っているのがどのような層(性別・年代など)なのかを知ることで、各作品の購買層ひいては客単価まで検証することが可能です。どんな商品化をすればいいのか、と悩んでいる商品企画の方はアニメショップに足を運ぶことをおすすめしますね。特に初めてアニメ作品の商品化に取り組む方にはぜひ行っていただきたいと思います。実際に、私の前任者は漫画もアニメも興味がない人だったので、「薄桜鬼」の商品化する時に、アニショップに行ってもらい、アニメ市場を実感してもらうことから始めました。

付け加えるならば、初めてアニメ商品に携わる人はアニメショップで売られている商品の上代もチェックしておいたほうがいいですね。商品を手に取ってみて自分のイメージする価格とのズレを確認してみてください。もちろんライセンス料等がかかるので価格が上がってしまうのは当たり前なのですが、普通のボールペンひとつとってみても、近所の文具屋さんのボールペンよりも高いです。肌感覚で商品の価格帯を知っているのといないのでは企画検討する上で大きな差になります。その商品の価格帯に合わせるためには、自分たちの商品はどのような工夫が必要なのかを考えるきっかけになるからです。

愛される商品を目指して

少しの工夫でファンの満足度が上がる

アニメの商品は単価が高くても満足度を上げられる可能性がある商品だと感じています。ほんの少しの工夫でファンに刺さる商品になって、すごい高評価をいただくこともあるんです。商品を作った人が作品を愛しているかどうかがファンには分かるんですよね。例えば、「シドニアの騎士」の扇子は7,700円(税別)で256本限定で販売しました。この数字は作品に登場するあるエピソードから設定したのですが、そのような細かな工夫でもいいんです。それだけでもファンにとってはそのエピソードを想起させるポイントになって嬉しいし、商品を愛してくれます。だから商品化の企画にはどうやったら喜んでもらえるか、愛してもらえるかを考えますね。
シドニアの騎士 扇子袋セット
http://www.maisendo.co.jp/sidonia/sidonianokisisensu.html

アニメ商品が「舞扇堂」を知るきっかけに

あと、アニメ商品化の取り組みは舞扇堂を知ってもらう絶好の機会だと捉えています。舞扇堂のアニメ商品を買ってもらうことで、普段扇子を手に取らない客層に私たちのことを知ってもらえるからです。

私たちはどんなアニメ商品にでも必ず商品の詳細と舞扇堂の紹介を掲載したメッセージカードを添付しています。それは、こだわって良い商品を作っているということと、作っているのが舞扇堂という京都の扇子屋だということを伝えたいからです。今までアプローチできなかったお客様に宣伝するのはとても大変なことですが、アニメ商品を通して舞扇堂を知ってもらえるなんて本当にすごいことだと思います。そう考えるとアニメ商品って最高で最強のPRツールなんですよ。もちろん、すぐには結びつかないですが、アニメ商品を買ってくれたファンの方が京都に「舞扇堂」という扇子屋があることを頭の片隅にでも覚えておいてくれて、いつか京都に遊びに来た時や扇子を買おうと思い立った時に舞扇堂を選んでくれると嬉しいなと思います。

京まふ2017では新商品を先行販売

今回の京まふの新商品は「文豪ストレイドッグス」のブックカバーの新バージョンになります。作品やキャラクターをイメージしたブックカバーを3種出す予定です。
文豪ストレイドッグス・京染ちりめんブックカバー(黒の時代)【3種類】
http://maisendo-shop.co.jp/shopdetail/000000000880

実は、版権元様(アニメ作品の権利元)から逆に「作りませんか?」とお声かけいただき今回制作することになりました。前回の「文豪ストレイドッグス」のブックカバーが評価されてのお声がけということで、お話をいただいた時は非常にありがたく嬉しかったです。「文豪ストレイドッグス」のふすま紙ブックカバーが多くの方にご購入いただき、愛用されていることを知ってくださっているということですから。今回は全体的にダークなイメージでデザインしています。前回と同じくデザインだけで特定のキャラクターやエピソードをファンに分かってもらえる素敵な商品になるよう現在制作に取り組んでいます。タイトなスケジュールですが、京まふで販売できるのが楽しみです。

株式会社舞扇堂の新商品は9月16日(土)、17日(日)開催の京都国際マンガ・アニメフェア2017(京まふ)にて販売されます。ぜひご来場いただき商品を手に取ってみてください!
京都国際マンガ・アニメフェア2017https://crossmedia.kyoto/feature/kyomaf2017

プロフィール

株式会社舞扇堂
創業:昭和43年(1968年)
代表:代表取締役社長  水上 隆仁
住所:京都府京都市伏見区桃山羽柴長吉東町56
HP:http://www.maisendo.co.jp
京扇子・京団扇・和雑貨の製造販売、菓子、食品の製造販売を行う。現在は基幹直営店である「舞扇堂」のほか、お菓子の店「まるん」、京都製クッキーの店「まいこと」を京都市内で展開する。

鬼塚 香奈子
株式会社舞扇堂 WEB企画事業部 WEB課
大学卒業後、広告代理店やアパレル企画会社での勤務を経て、2010年に舞扇堂に入社。
同社のWEBサイト、ECサイトの管理を担当しながら、現在はアニメ商品の企画・営業責任者として舞扇堂らしさを大切にした商品開発を続けている。